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優れた防錆性能と美しい仕上がりで知られるカチオン電着塗装。自動車部品や各種金属製品など、高い信頼性が求められる分野で幅広く活用されている塗装技術です。
しかし屋外での使用や色にこだわりたい場合は、注意すべき特性が存在します。特性を正しく理解せずに採用すると、予想外の変色や耐久性低下につながる可能性があります。
この記事ではカチオン電着塗装の屋外での耐候性や選べる色の制約、長持ちさせるための適切な施工方法を分かりやすく解説します。
この記事を読んでいただきたい方
屋外に設置する金属製品の防錆塗装を検討している設計や開発の担当者。
カチオン電着塗装で黒以外のカラーを選択したいと考えている企画者。
過去に電着塗装した製品が屋外で変色してしまい原因や対策を探している方。
この記事を読むとわかること
カチオン電着塗装が持っている屋外での耐候性の限界と紫外線による影響。
黒色が標準とされる理由と別の色へ変更することが難しい背景。
屋外使用において優れた耐用年数を実現するための効果的な重ね塗り手法。
カチオン電着塗装の基本特性と色のバリエーション
カチオン電着塗装は塗料を満たした槽に製品を浸し、電気の力で均一な塗膜を密着させる技術です。
複雑な形状や内部まで塗料が回り込むため、防錆性能において非常に高い信頼性を誇ります。
標準色として黒色が広く使われる理由
電着塗装で用いられる塗料の多くはエポキシ樹脂を主成分としています。
エポキシ樹脂は本来ベッコウ色のような色合いをしており、きれいな発色を出すのが難しい素材です。発色の弱さを隠しつつ高い防錆性能を発揮させるため、黒色の顔料を加えることが定着しました。
市場で流通しているカチオン電着塗装製品のほとんどが黒色なのは、この構造上の特性によるものです。
黒以外の色への変更が非常に困難な背景
電着塗装のラインでは数万リットル以上に達する巨大な塗料槽を使って加工を行います。
そのため塗料を別の色へ入れ替える作業には、非常に大きな手間と多額の費用が伴います。
さらに回収槽や洗浄槽でも塗料が交ざるリスクがあるため、同じ設備で頻繁に色を変えることはできません。一部にグレーや透明の塗料を扱う工場もありますが、基本的には黒色専門のラインが主流となっています。
| 仕上げ方法 | 主な使用場所 | カラーの選択肢 | 耐候性(紫外線への強さ) |
| カチオン電着塗装のみ | 屋内機械の構成部品、下回り | 原則として黒色のみ | 低い(日光で劣化しやすい) |
| カチオン電着+溶剤塗装 | 屋外設置機器、建築用部材 | 多彩なカラーに対応 | 中程度から高いレベル |
| カチオン電着+粉体塗装 | 厳しい屋外環境の構造物 | 豊かな色彩と質感 | 非常に高い保護性能 |
屋外環境でカチオン電着塗装を採用するリスク
錆に強いカチオン電着塗装ですが、太陽光が直接当たる環境への単体利用には懸念があります。
塗料の化学構造に由来する課題を理解しておくことが製品づくりの失敗を防ぎます。
紫外線によるチョーキングと色の変化
主成分であるエポキシ樹脂は太陽光に含まれる紫外線に弱いという性質を持っています。
日光に晒され続けると樹脂の分子構造が壊れ、表面が粉をふいたように白くなる現象が起こります。数ヶ月から1年程度で美しい黒色の光沢が失われ、灰白色に変色してしまう事例が多く見られます。
表面の退色は見た目の悪化だけでなく、塗料本来の防錆機能を少しずつ削ぐ原因となります。
耐食性と耐候性の性能的な違い
金属塗装を評価する際には、耐食性と耐候性という2つの概念を分けて考える必要があります。
耐食性は湿度や塩分から金属を守り、錆の発生を防ぐ能力を示します。
これに対して耐候性は、日光の紫外線や雨風などの外気条件に耐える力を意味します。カチオン電着塗装は優れた耐食性を誇りますが、耐候性に関しては決して高くありません。
屋外で長期にわたり美しさと品質を保つ工法
屋外でカチオン電着塗装製品を使用するには、弱点である紫外線を防ぐ対策が必要です。
下地の優れた防錆力を活かしながら、表面を保護する2層構成の塗膜を形成します。
トップコート処理による二重保護の構造
紫外線による劣化を防ぐ有効な解決策が、カチオン電着塗装の上に別の塗料を重ねることです。
この手法はトップコート処理と呼ばれ、屋外向け部品の製造において標準的に用いられています。下地のカチオン電着塗装が強力な錆止めとして機能し、上の塗装が紫外線から下地をガードします。
互いの長所を組み合わせることで、極めて高い耐久性と美観を両立させることが可能になります。
屋外用途におすすめの上塗り塗料
重ね塗りに適した塗料としては、アクリルウレタン塗料やポリエステル系の粉体塗料が挙げられます。
これらの塗料は耐候性に優れており、長期間直射日光に当たっても劣化しにくい特徴があります。また鮮やかな赤や青、落ち着いたシルバーなど多様なカラーリングから自由に選択できます。
デザイン性を高めつつ強固な防錆構造を作れるため、屋外設置機器に最適な選択肢です。
設置環境に応じた最適な塗装構成の選び方
製品の設置場所や要求される耐久性に合わせて、適切な塗工方法を選択することが重要です。
単体仕上げと重ね塗り仕上げの違いを理解し、コストと性能のバランスを取りましょう。日光が遮られる機械内部や屋内用製品であれば、カチオン電着塗装のみで十分な性能を発揮します。単体仕上げはコストを低く抑えられ、大量生産においても優れた生産性を誇ります。
一方、日光が当たる屋外製品や特定のカラーが求められる場合は、重ね塗りが必須となります。初期費用や工程数は増えますが、製品の寿命を格段に延ばしてトラブルを未然に防ぎます。
よくある質問(FAQ)
Q1. カチオン電着塗装は屋外でそのまま使用できますか?
A1. そのままの使用は避けるべきです。紫外線に弱いため、数ヶ月で白く変色したり塗膜が傷んだりします。屋外で使う場合は耐候性のある上塗りを行ってください。
Q2. カチオン電着塗装で黒以外の色を選択することは可能ですか?
A2. 単体で赤や青などに塗ることは基本的にできません。設備が大きく塗料の交換が困難なためです。黒以外の色に仕上げたい場合は、電着の上に希望の色で上塗りを行います。
Q3. 塗った表面が白く変色してしまった場合の対処法はありますか?
A3. 白くなった部分は紫外線の影響で表面が劣化した状態です。劣化層を綺麗に研磨して取り除いたあと、耐候性の高い塗料で再塗装することで復元できます。
Q4. 上塗りを追加することで費用や工期はどの程度変わりますか?
A4. 塗装の工程が1つ増えるため、単体施工に比べてコストや納期は増加します。しかし製品の耐用年数が飛躍的に向上するため、将来の修繕費用を抑えるメリットがあります。
Q5. グレーのカチオン電着塗装なら屋外でも変色しませんか?
A5. グレーであっても主成分がエポキシ樹脂である場合は、黒色と同じく紫外線で劣化します。色が違っても屋外で使う際には耐候性のある塗料での上塗りが不可欠です。
Q6. 車の足回り部品はカチオン電着塗装ですが変色しないのですか?
A6. 車の底面や足回りは直射日光が当たりにくい場所にあるため、紫外線のダメージを受けにくいです。直射日光に曝されるボディ外装には、必ず耐候性の高い上塗りが施されています。
Q7. 上塗りとして使用する塗料はどのような種類が良いですか?
A7. 耐候性の高いウレタン樹脂塗料や、屋外用に開発されたポリエステル粉体塗料が最適です。設置環境や求められる色彩、予算に合わせて塗料の種類を選択します。
まとめ
カチオン電着塗装は非常に高い防錆性能を持つ一方で、紫外線に弱く標準色が黒色に限られる特徴があります。
屋外での使用や色にこだわりたいケースでは、耐候性の高い塗料による上塗りが必須のプロセスとなります。下地としてカチオン電着塗装を施し、その上から希望のカラーでトップコートを行うのが最も効果的です。
特性を適切に理解した上で塗装を施し、長期間にわたって性能と外観を保てる製品を作り上げましょう。
「大阪めっき・アルマイトナビ」によるカチオン電着塗装の事例

自動車向け板バネ
自動車の内装部品に使用される板バネにカチオン電着塗装を施しました。
下地として化成処理(リン酸亜鉛被膜)を施すことで、耐食性を付加するとともに、アンカー効果により塗膜密着性を向上させています。

ADC12モーターカバー
アルミダイキャストADC12のモーターカバーにカチオン電着塗装を施しました。
化成処理を均一に反応させるために、前処理として表面調整を行っています。さらに電着塗装後には、塗膜に含まれる水分を飛ばすために約180℃で焼付けしました。

介護用手すりポール
介護施設に設置される手すりポールにカチオン電着塗装を施しました。
カチオン電着塗装は、耐候性が多少ネックとなり、直射日光(紫外線)に長時間晒されると退色・劣化しやすいため、屋外用途の場合は上塗り塗装が必要です。

消火器バルブ(アルマイト電着塗装)
アルミダイカストの消火器バルブに対してアルマイト処理+電着塗装を施し、耐食性を向上させております。
今回はアルミダイカストでしたが、真鍮製のものについても実績がございます。また、消火器は高い耐食性が要求される船舶向けのものもあり、そういった用途品にも対応可能です。
カチオン電着塗装なら旭鍍金工業所にお任せください!
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当サイトを運営する株式会社旭鍍金工業所(大阪・八尾市)では、850×450×250サイズまでの処理が可能なカチオン電着塗装ラインを保有しております。月産数十万個の量産から、数百~数千個の小中ロット量産まで対応可能です。
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弊社は、蛍光X線膜厚計やキーエンスのデジタルマイクロスコープを保有しております。したがって、「精密部品のため、指定のめっき厚・合金比率を遵守しているか検査してほしい」というご要望にも、問題無く対応可能です。


- 株式会社旭鍍金工業所 代表取締役
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株式会社旭鍍金工業所は八尾市に工場を構え、メッキやアルマイトなどの各種表面処理を承っております。昭和22年の創業以来、各種表面処理にこだわり技術向上に努めてまいりました。
業務内容はニッケルめっき、装飾クロムめっき、3価クロムめっき、スズコバルトめっき、無電解ニッケルメッキ、硬質クロム、電着塗装、アルマイト、化成処理(サーテック650)、スズめっき、亜鉛めっき、3価ユニクロ、クロメートなど、表面処理全般にわたり、様々なニーズにお応えいたします。
スタッフ一同、皆様からのお問い合わせをお待ち申し上げております。
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