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表面処理に関する技術情報をまとめた専門技術Webサイトです。
アルマイト処理とは?
アルマイト処理とは、主にアルミニウム系材料を対象とした表面処理技術の一つで、電解酸化によってアルミニウム表面に酸化アルミニウム(Al₂O₃)膜を形成するプロセスです。
この処理により、金属表面の耐食性や耐摩耗性、さらには美観性を向上させることができます。金属の物理的特性を改善するだけでなく、様々なデザインニーズにも応えられるため、広く利用されています。
アルマイト処理は、純度の高いアルミニウムの化学的特性を活かし、軽量で強固な材料としての特性を引き出します。また、耐熱性や絶縁性など、特有の性質も持つため、航空機産業や自動車産業、さらには家電など、多方面での活用が進んでいます。
アルマイト処理のメリット・デメリット
アルマイト処理のメリット
アルマイト処理には、多くの利点があります。以下に代表的なメリットを紹介します。
①耐食性
アルマイト処理を施されたアルミニウムは、雨水や塩水、酸性の環境でも耐えることができ、腐食を防ぎます。
②耐摩耗性
酸化アルミニウム膜は非常に硬く、摩耗や擦り傷に対して優れた耐性を示します。
③美観性・意匠性
アルマイト処理によって得られる美しい光沢やマット仕上げは、外観を向上させるのに寄与します。また、カラーアルマイトを施すことによって、デザインの多様性も広がります。
④電気絶縁性
アルマイト膜は電気絶縁性を持っているため、電気機器の部品としても利用されます。
アルマイト処理のデメリット
アルマイト処理には有用な特性が多い一方、いくつかのデメリットも存在します。
①耐熱性が低い
まず、アルマイト皮膜の耐熱性が低い点が挙げられます。アルマイト被膜の耐熱性は、アルミニウムの3分の1ほどの約100℃で、これを超える高温環境ではクラックや剥がれが生じる危険性があります。また、熱伝導率も低く、高温環境下での使用は注意が必要です。
②靭性が低い
次に、アルマイト皮膜は柔軟性がなく脆いため、衝撃を加えると、皮膜が容易に割れたり剥がれたりするリスクがあります。この性質は、衝撃やひずみに弱いことを意味します。
③均一形成が難しい
さらに、アルマイト皮膜の均一形成が難しいこともデメリットです。凹凸のある表面や複雑な形状を持つ部品では、酸化皮膜の厚さや品質の均一性を保てないことがあります。
④耐薬品性が低い
また、アルマイト皮膜は強酸や強アルカリに弱く、長時間曝露すると溶解や劣化が生じることがあります。
⑤変色・退色しやすい
さらに、退色しやすいという特性もあり、特にカラーアルマイトでは、紫外線や高温、水分が影響するため、時間とともに色あせる可能性があります。
アルマイト処理の開発・起源
アルマイト処理は、20世紀初頭に開発されました。
最初の実用化は1930年代に行われ、第二次世界大戦中には航空機の耐久性・軽量化向上の目的で、アルミニウムの使用が急増したこともあり、アルマイト処理は重要な表面処理技術として普及しました。
戦後も、アルマイト処理は電子機器や自動車産業などで利用され、現在では家電製品・OA機器や様々な工業製品に広く採用されています。そのため、アルマイト処理は技術革新と共に進化を遂げ、現在の高度な加工技術に繋がっています。
アルマイト処理の原理・処理方法
アルマイト処理の原理・処理プロセスについて解説します。
アルマイト処理の原理
アルマイト処理は、電解液(通常は硫酸またはクエン酸)を使用し、アルミニウム部品を陰極に取り扱い、直流電流を流すことによって陽極として酸化膜を形成します。このとき、アルミニウムが酸化されて酸化アルミニウムの膜(不動態被膜)が生成されます。
アルマイトの処理方法
以下は、アルマイト処理の一般的な手順です。
①前処理
表面の汚れや酸化物を除去するために、脱脂やエッチング、研磨などを行います。
②アルマイト処理
前処理が完了した部品を電解液で浸漬し、電流を流します。この際、酸化膜が形成される過程が開始されます。
黒アルマイトの場合、染色を行います。この際、素材によっては濃い黒色をつけるのが難しいため注意が必要です。
③封孔処理
表面にあいた微細な孔を閉じるために、封孔処理を行い、内部の素材を守ります。
④乾燥
最後に、アルマイト被膜を硬化させる目的で、60~80℃の温度で一定時間乾燥させます。
アルマイト処理とめっきの違い
アルマイト処理と通常のめっき工程には、いくつかの明確な違いがあります。
①プロセスの違い
アルマイト処理
電解酸化によってアルミニウム自身が酸化され、酸化アルミニウム膜が形成されます。この膜は素材に結合しており、耐食性や耐摩耗性が向上します。
電気めっき
電気めっきは、外部から金属イオンを素材に付着させるプロセスです。これは専用の電源を使用して金属イオンを還元し、基材が持つ特性とは異なる特性を持つ金属層を形成します。
②対象素材の違い
アルマイト処理
主にアルミニウムおよびその合金類が対象です。
電気めっき
鉄、ステンレス、銅、ニッケル、クロムなど、様々な金属が対象となります。
③機能性・美観性の違い
アルマイト処理
耐食性や耐摩耗性が向上し、電気絶縁性があります。一般的な白アルマイトのほか、黒アルマイト、カラーアルマイトなどにより美観性・意匠性を向上することができます。
電気めっき
導電性、装飾性、耐食性、耐摩耗性、耐候性、耐久性など、目的に応じ様々な機能性・美観性を付与することができます。
アルマイト処理の用途・対象素材
アルマイト処理の用途
アルマイト処理は様々な業界で利用されており、その用途は多岐に渡ります。代表的な用途としては以下のようなものがあります。
航空宇宙
軽量かつ耐久性・高温耐性が求められる航空機や人工衛星、ロケットの部品に採用されます。
自動車・輸送機器
エンジンや車体部品などに使用されることで、耐久性向上・長寿命化に貢献します。
家電製品・OA機器
炊飯器や冷蔵庫、洗濯機などの内部部品にもアルマイト処理が施されており、耐久性と美観向上に寄与しています。
インテリア・日用雑貨
軽量で美しい仕上がりのため、家具・インテリアや日用品・雑貨に採用されることも少なくありません。
アルマイト処理の対象素材
アルマイト処理は、主に以下のような素材に適用されます。
純アルミ
1000番台、1100番台の純度が高い、いわゆる純アルミを指します。
アルミ合金
最も一般的なA5052・A5056をはじめ、特にAl-Si、Al-Cu、Al-Mgなどの合金に適用されることが多いです。
アルミ鋳物
AC材・ADC材(アルミダイキャスト)などのアルミ鋳物、特にADC12はシリコンを多く含有するため、アルマイトがつきにくいという特性があります。したがって、前処理・後処理を工夫する必要があります。
アルマイト処理の膜厚の等級
アルマイトやめっきにおいて、膜厚は製品寿命や品質を左右する重要な要素です。一般的に、膜厚の等級は以下のように分類されます。
①通常膜厚
約5μmから25μm程度で、一般的な表面処理に用いられます。
②厚膜
25μm以上の膜厚で、耐摩耗性や耐食性が特に重視される特殊な用途(航空機部品や工具など)で要求されます。
用途に応じた膜厚の選定が不可欠で、厚膜が必須な部品に対しては、費用と時間のバランスを考慮する必要があります。
アルマイト処理の種類
アルマイト処理には、主に次のような種類があります。
①白アルマイト処理(普通アルマイト処理)
白アルマイトは、通常のアルマイト処理で形成される膜で、透明で光沢のある仕上がりが特長です。主に、耐食性が求められる一般的な用途に利用されます。
②黒アルマイト処理
黒アルマイト処理は、酸化膜の形成後に染料を使用して黒色に着色した処理です。 見栄えを向上させるだけでなく、光の反射を抑える効果もあります。このため、外観部品において人気があります。
③カラーアルマイト処理(着色アルマイト処理)
カラーアルマイト処理では、様々な色合いを持つ染料を利用して、膜として色を帯びた表面を作り出します。これにより、デザインやブランドの差別化が図れます。
④硬質アルマイト処理
硬質アルマイト処理は、膜厚が25μm以上で、特に耐摩耗性が必要な場合に施されるプロセスです。一般的には、工具部品やクランプなど、高い耐久性が求められる用途に適しています。
アルマイト処理後電着塗装によるメリット
アルマイト処理を行った後に電着塗装を施すことで、さまざまなメリットが得られます。
①耐久性の向上
アルマイト処理によって耐食性や耐摩耗性が向上し、その上に電着塗装を重ねることで、さらなる耐久性が得られます。
②デザインの多様性
電着塗装は色や仕上げを自由に選択できるため、デザインの自由度が高まります。
③電気的性質の向上
絶縁性が求められる部品において、優れた電気絶縁性能を実現できます。
当社のアルマイト処理
当サイトを運営する株式会社旭鍍金工業所は、大阪府八尾市において、白・黒アルマイトをはじめ、無電解ニッケルめっきやクロムめっき、スズめっきなどの各種表面処理を行っております。
①断られがちなアルミ鋳物(AC・ADC)の実績多数
アルミ鋳物、特にシリコン含有量が多いADC12は、アルマイトが付きにくいため、嫌がるめっき業者も少なくありません。
しかし弊社では、前処理工程を工夫することにより、アルマイトが付きにくいアルミ鋳物素材へも問題無く対応しております。
②黒アルマイトを、濃い黒色でムラなく均一に仕上げます
アルミ鋳物に黒アルマイト処理を施す場合、濃い黒色を染色することが簡単ではありませんが、長年にわたり黒アルマイトの経験がある弊社は、前処理・染色方法を工夫することにより、濃い黒色でムラなく均一な膜厚で仕上げることを得意としております。
③大阪府内最速クラスのスピード
長年にわたり多数の企業様から支持され続けているのは、お受け取りしたお客様の製品を、一日でも一時間でも早くお返しする体制を整えているためです。
ただし、当然ながら早ければOKということではなく、お客様のご要望に応じてデジタルマイクロスコープや膜厚計などの検査・測定機器を使用して、精度・品質を担保したうえで納品させていただきます。
④単品・小ロットから100万個の量産品まで対応可能
「1個だけお願いしたい」「試作品なので数個だけお願いしたいが、量産時もお願いしたい」というご相談を頂くことがありますが、当社は、製品サイズにもよりますが単品・小ロットから100万程度までの量産も実績がございます。
⑤複合表面処理などの技術提案
アルマイトと電着塗装など、異なる表面処理を組み合わせることで機能性をさらに高めた複合表面処理のご提案も可能です。
機能性・美観性向上のほか、コストダウンや納期短縮など、ご相談いただけましたら最適な表面処理を提案させていただきます。